夜、眠れないときにはどうする?
不眠のパターンや対策を紹介
眠らなければいけないのに、目がさえてしまってなかなか眠れない……。どなたも一度や二度は、このような経験があるのではないでしょうか。たまにそのような状態になるのは、仕方ないかもしれません。しかしそれが毎日のように続いたとしたら、かなりの苦痛です。ここでは、「眠れない」という悩みを抱えている方に、苦痛を和らげていただく方法と考え方を整理します。
監修:柳沢 正史 先生
(株式会社 S’UIMIN 取締役 CSO 会長、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS) 機構長)
あなたの眠れないはどちら?
「眠れない」と訴える人は少なくありません。そして、この「眠れない」という状態は、
- なかなか寝つくことができない入眠障害
- 眠っても目が覚めてしまう睡眠維持障害
に大きく分けることができます。詳しく見ていきましょう。
寝つけない? 目が覚めてしまう?
1.入眠障害
眠ろうとしてもなかなか寝つけないパターン。ただし、就床時刻(床に就く/ベッドに入る時刻)が早すぎたり、睡眠を妨げるような環境など、原因が明確なケースは除きます。
2.睡眠維持障害
いったん眠りについた後、十分に眠れないまま目が覚めてしまうパターン。夜中に睡眠の途中で目が覚める場合を「中途覚醒」、早朝に意図するよりも早くに目覚めて眠れなくなってしまう場合を「早朝覚醒」とさらに区別することもあります。年齢が上がるほど、多くなる傾向があります。
これに加え、眠りが浅くてよく眠った感じがしない、あるいは熟眠感が得られない場合を「熟眠障害」という不眠のパターンとして扱うこともありますが、熟眠感の欠如は、確保できた睡眠時間が短い「睡眠不足」や睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸」などの別の問題によっても起こり得るため、「眠れない」とは区別して考えると良いでしょう。
不眠と不眠症
入眠障害と睡眠維持障害は、「眠ろうとしているのに、思うように眠れない」という点で共通しています。「不眠」は、このような状況を意味する言葉であり、眠るための時間を十分に確保できない「睡眠不足」とは根本的に異なるものです。
不眠は一時的であれば、誰にでも起こり得るものです。そのため、たまたま眠れない晩があっただけで「不眠症」に該当することはありません。
対して「不眠症」は、睡眠障害の名称であり、次のような基準に基づいて診断されます。
- 本人が「眠ろうとしても眠れない」と感じている
- それにより日中に困っている・何らかの症状がある
- その状態が慢性的に続いている
つまり、「眠れない」ということに悩んだり、「眠れない」ことによって日中に眠気や倦怠感などを感じたりしていて、さらにその状態が慢性的に続くことで、「不眠症」の診断基準を満たすことになります。心当たりがある場合は医療機関を受診しましょう。
眠れない原因は?
アリナミン製薬調べ
調査テーマ:新製品の受容性調査/調査方法:インターネットリサーチ/2025年4月実施/調査対象:睡眠関連の症状(寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に何度も起きてしまう、早朝に目が覚めてまた寝ることができない)を週1回以上経験している「非常に悩んでいる人+悩んでいる」を選択した人860人
【調査機関】株式会社クロス・マーケティング
さて、「眠れない」と一言でいっても、その要因も人によってさまざまです。具体的には、生活習慣や睡眠環境などの影響、悩みや心配事への不安、あるいは気持ちが高ぶっている影響、カフェインやアルコールなどの飲食物の影響、痛みやかゆみ、体内時計のズレ(時差ぼけのような状態)、さらには睡眠時無呼吸、夜間頻尿、うつ病や統合失調症などの他の疾患の影響なども考えられます。
実際に、「眠れない」という人を対象に調査を行うと、「眠る前にあれこれ考え事をしてしまう」「精神的なストレスを感じやすい性格」「歳のせい」「運動不足」「睡眠の前にスマホを見てしまう」「仕事上のトラブルや人間関係」などが、眠れない原因として上位に挙げられました。
眠れないときはどうする?
ここからは「眠れない」への対策を解説していきます。
まず、対策として最も大切なのは、「眠れない要因」を突き止めて、それを排除していくこと。なぜなら、これまでに見てきたように、眠れない要因は多岐にわたるからです。
言い換えれば、「睡眠の質を高める方法」や「眠れないときの対策」として紹介されている内容をいくつ試しても、自分の眠れない要因をそのままにしていれば効果は期待できないのです。
この記事でもいくつかの具体的な方法やテクニックを紹介しますが、やみくもに取り入れる前に、ご自身の眠れない要因をよく考え、それに合いそうなものから試してみてください。
睡眠環境を整える
まずは、寝室の環境や寝具が適切か、しっかりとチェックしましょう。
光
眠りのためにはなるべく暗いほうが良く、弱い光であっても中途覚醒を増やしてしまうという報告もあります。外からの光を確実に遮光し、室内の照明器具も明るくならないように。また、睡眠前の時間を過ごすリビングを明るくしすぎないように気をつけることも大切です。
音
音も睡眠を妨げる大きな要因になります。騒音はできるだけシャットアウトしましょう。一方で、落ち着いた音楽が眠りを誘ってくれることもあるので、眠れないときには試してみても良いでしょう。
室温や湿度
暑い・寒い、蒸している・乾燥しているなどのために寝苦しさを感じるようであれば、エアコンや加湿器などを上手に使いましょう。二酸化炭素濃度が高まると睡眠の質が悪化するという報告もあり、適度な換気もポイントです。
寝具
枕の高さや硬さを変えたり、肌ざわりの良い素材のパジャマに着替えたりすることが、心地良い眠りにつながることも。
就寝前や眠れないときに試してみたいこと
眠れないときは、布団にあまり長くとどまるのではなく、布団から出て気分転換し、再び眠くなってから布団に戻るのが良いでしょう。また、そんなときにどんな方法で気分転換をするのか、決めておくと迷わずに済みますので、いくつか例を挙げていきます。
深呼吸をする
深呼吸をすることで、副交感神経(心身を落ち着かせる自律神経)が優位になっていくことが期待できます。コツは、自分の呼吸に集中してゆっくりと息を吐いて吸うこと。これは、布団に入って横になったまま試してみても良いでしょう。
筋弛緩法(漸進的【ぜんしんてき】筋弛緩法、漸進的弛緩法)を試す
筋肉を緊張させたり緩めたりを繰り返すことで、心身の覚醒状態を抑えてリラックス効果を生み出すという方法です。
静かな場所で座る、または横になり、呼吸を整えてから、筋肉を5~10秒ほど緊張させ(力を入れ)た後、一気に力を抜く動作を、足や手など、全身の筋肉で何度か繰り返してみてください。深呼吸同様、布団の中で何度か試してみて、なかなか眠れそうになければ布団から出てみることを考えてみましょう。
自分なりの「眠れないときにやること」を決めておく
眠れないときに大切なのは、無理のない方法で心身をリラックスさせ、「眠れない」という状態を忘れてしまうこと。読書、動画鑑賞、アロマ、ペットと遊ぶ、軽い飲料の摂取、セルフマッサージ、ヨガ、静的ストレッチ(反動を使わずに筋肉を伸ばすストレッチ)など、いろいろなことが考えられます。過度に興奮したり、覚醒したりしてしまうことを避け、自分に合いそうなものを試してみてください。そして、「そろそろ眠れるかな」と感じたところで布団に戻るようにしましょう。
「眠れない」を改善するために
日ごろからできること
続いて、「眠れない」を改善するために、日ごろから気をつけたいことを、朝、昼、夜という1日の時間帯ごとに挙げていきます。
夜勤や交替制(シフト)勤務などで生活リズムが一定でない方は、「朝・昼・夜」をご自身の起床・活動・就寝のタイミングに置き換えて考えてみてください。無理のない範囲で、できることから取り入れていきましょう。
起床時の留意点、
起きた後にできること
起床時刻を一定にする
前夜よく眠れなかったとしても、起床時刻はできるだけ変えないようにしましょう。「もっと寝ていたい」と起床時刻を遅らせてしまうと、その日の夜もまた遅い時刻まで目がさえたまま眠れなくなってしまいます。
また、起床時刻が遅いと日光を浴びる時間も遅くなり、体内時計が乱れて睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌パターンも変化してしまい、それもまた夜間の睡眠に悪影響を及ぼします。
朝日を浴びる
起床後に強い光を浴びることで体内時計のリセットが促されます。それとともに、睡眠ホルモンの分泌が低下して、覚醒度が高まります。そして、体内時計が時を刻んでいき14~15時間程度経過すると、メラトニンの分泌が増えてきて、眠気を催しやすい状態になってきます。
夜に眠りにつきやすい状態になるように、起きたらまず日光を浴びましょう。春や秋、天気の良い日は、外へ出て、直接日光浴を行うと良いでしょう。夏季や冬季、天気の良くない日には、カーテンを開けてなるべく起きたら日光を浴びるようにしてみてください。
朝食を欠かさない
朝食を取ることも体内時計のズレをリセットするようにはたらきます。反対に朝食を取らないと体内時計が遅れていき、寝つきが悪くなったり、睡眠の満足感が低下したりすることが明らかにされています。
また、朝食を取らないと午前中の脳のはたらきが悪く、仕事などの効率が低下してしまいます。そのために残業しなければならなくなり、結果として睡眠不足になるという、悪循環も起こり得ます。
日中にできること
適度に体を動かす
日中に体を動かして適度に疲れておくと、夜間に心地良い睡眠を得やすくなります。反対に日中の運動量が少ないと、夜になっても疲労感がなく、また概日リズム(24時間周期の生体リズム)が平たんになることも関連して、不眠になりやすくなります。
昼寝のしすぎや仮眠の時間帯に注意する
睡眠不足で仕事や作業の効率が下がっていると感じたときは、状況が許せば短時間の仮眠が効果的です。ただし、夕方以降、または長時間の仮眠をとると、睡眠への欲求が解消されてしまって、夜に眠れなくなることもあります。一般的に、午後3時ごろまでに15分程度までの昼寝なら、夜の睡眠への影響が少ないといわれています。
夕方以降はカフェイン・タバコを控える
カフェインはよく知られているように、眠気を覚ますような覚醒作用があります。そして、カフェインの血中濃度半減期(血液中のカフェイン濃度が半分になるのに要する時間)は、日本人では3~7時間程度。人によっては夕方に摂取したカフェインが、日付が変わってもまだ半分ぐらい血液中に残っているということです。心当たりがあれば、コーヒーは何時くらいまでなら眠れなくならないか、自分自身で試して確認をしてみましょう。
また、タバコのニコチンにも覚醒作用があり、ニコチンの血中濃度半減期は約2時間といわれています。タバコは吸わないことがベストですが、吸う人でも睡眠への影響を考え、夕方以降、特に就寝前は控えましょう。
夕方以降にできること
まぶしい光を避ける
夕方以降は朝とは逆に、まぶしい光を避けることがポイント。明るい場所へ行くことをなるべく避けましょう。就寝前を過ごすリビングの照明も、雰囲気の良いレストランを目安に明るくしすぎないようにしましょう。
早めに適量の夕食
夕食の時刻が遅いと、食べたものの消化活動が続いている状態で横になることになり、眠りが妨げられることがあります。また、夕食に食べる量が多すぎると、胃腸の負担が大きくなって寝つきが悪くなることもあります。
さらに、夜遅い時間の食事は、体内時計を遅らせるような影響を及ぼすことも問題で、それも睡眠の妨げとなります。加えて、遅い時間に食べると翌朝の空腹感が乏しくなり、朝食の欠食につながって、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなります。
しかし、あまりに空腹だとかえって眠れなくなってしまうのも難しいところです。就寝の3~4時間前を目安とし、どうしても就寝直前の食事となる場合はごく軽く消化が良いものにとどめましょう。
夜の運動は適切な範囲内にとどめる
運動中には体温が上昇し、運動後に低下します。このような体温の低下が、心地良い睡眠を誘ってくれることがわかっています。ただし、あまり強度の高い運動や就床時刻直前の運動は交感神経を緊張させてしまい、逆効果になることも。就床時刻の1時間以上前までに運動は切り上げるようにしましょう。
就寝直前ではなく少し前に入浴する
入浴にはリラックス効果があります。さらに、いちど体を芯まで温めると、入浴後に熱が放出されて下がっていくときに、自然な眠気を感じて入眠しやすくなります。入浴は、就床の1~2時間前にゆっくりと40℃程度の湯船につかるのがベスト。逆に、どうしても入浴が就寝直前になるときは、体を温めすぎないように軽めのシャワーで済ませましょう。
寝酒をしない
アルコールを飲むと、確かに寝つきが良くなるように感じます。しかし、トイレが近くなったり交感神経が刺激されたりすることで中途覚醒が増え、睡眠の質が低下してしまいます。
また、睡眠のための寝酒を続けていると、アルコールに対する耐性が生じてしまい、飲まないと眠れないという体質になってしまいかねません。
眠気を感じてから布団に入る
「明日は早いから早く寝ないと」と考えて寝ようとしても、眠気を感じていなければなかなか眠れるものではありません。
また、「眠れない」と訴える人の中には、床上時間(布団やベッドにいる時間)が長すぎる人もいるようです。睡眠環境などに問題がないのに「よく眠れない」と感じる場合は、必要以上に早く眠ろうとしていないか、振り返ってみることも必要です。
パソコン・スマホ操作は早めに切り上げる
パソコンやスマホの影響は、
- 光の刺激
- 情報の刺激
- 時間を奪われること
の3つに分けて考えることができます。特に気をつけたいのは、②と③で、メールや対戦ゲームなど脳を活性化する情報からの刺激(インタラクティブな操作)によって、覚醒が促されたり時間を浪費したりしないように気をつけましょう。
夜は電子機器はなるべく控え、どうしてもという場合は①光量を落として、②リラックスにつながるような内容で、③時間を決めて使いましょう。
+α 睡眠を測定・記録する
睡眠時無呼吸も目覚めの要因に
睡眠中に目が覚めてしまう要因としては、「睡眠時無呼吸症候群」も考えられます。睡眠中に呼吸が止まったり弱くなったりするため、その影響で息苦しくなり目が覚めてしまうことがあるのです。
睡眠時無呼吸は自分では気づきにくいことを踏まえ、家族にいびきを確認してもらったり、睡眠中の呼吸状態を検査で確認するのが良いでしょう。睡眠時無呼吸があると夜間頻尿が起こることもあるので、夜中に何度もトイレに行くような場合には注意が必要です。
「実は眠れている」というパターンも
また、睡眠を客観的に詳しく測定してみると、「眠れない」という自分の感覚と異なりよく眠れている、というケースも少なくありません。睡眠中は意識を失ってしまい、自分の睡眠を正確に把握することができないためで、専門的には「睡眠状態誤認」ともいわれます。
この他、シニア世代では健全な加齢現象の範疇として夜中に2~3回目覚めるケースもあり、「必要以上に心配しすぎない」「自分の睡眠が悪くないと知る」ことも重要なポイントになります。
脳波測定などで睡眠を詳しく測ってみると、自分が思っているよりもよく眠れていることや、短い中途覚醒の前後に思いのほか深い睡眠がとれていることに気づき、気持ちが楽になっていくかもしれません。
睡眠を手元で記録して要因に気づくことも
ご自身で就床時刻や起床時刻、中途覚醒の回数、睡眠の満足感、朝食や夕食の時刻、日中の眠気、カフェインやアルコールの摂取量・時刻、タバコの本数、その他の出来事などを「睡眠日誌」として記録していくと、自分の睡眠を妨げている原因を特定できることがあります。
最近は睡眠を記録する専用のアプリやスマートウォッチなどもあり、睡眠時間や中途覚醒を自動で記録できる他、生活習慣を振り返るヒントを提示してくれるものも。
「何となく眠れない」と感じていても、記録を続けることで、眠れないパターンやきっかけに気づける場合があります。紙のノートに簡単に書き留めるだけでも問題ありませんので、続けやすい方法を選びましょう。
その他、睡眠の悩みや傾向を確認できるチェックシートを活用してみるのも一つの方法です。現在の睡眠リズムや困りごとを整理するきっかけとして役立ちます。
★参考:眠りの悩みチェックシート
それでも眠れないときは…
【柳沢先生からのアドバイス】
「眠れない」という症状は、とてもつらいものです。「このまま朝が来てしまうのではないか」と不安になるかもしれません。また近年では、睡眠の問題が生活習慣病やメンタルヘルス関連の病気のリスクと関連していることも明らかになっていて、長い人生のウェルネスのためにも質の高い睡眠をとることが重要だと認識されています。
一方で、「眠らなければ」と意識しすぎると、かえって目がさえて余計に眠れなくなってしまうことがあります。また、特にシニア世代では、夜間に眠れないために長時間昼寝をしていたり、睡眠時間をたっぷり確保しようと早すぎる時間帯に床についたりして、結果として眠れなくなっている人も少なくありません。睡眠は理想や完璧を求めすぎず、少し気を楽に考えてみることをお勧めします。
また、近年は睡眠薬の開発が進み、依存性や副反応が少ない安全性が高いものが増えています。必要に応じて、医師に相談をするのも良いでしょう。
睡眠にあてる時間はざっと1日の3分の1。つまり人生の3分の1です。毎日、心地良く眠れるように、この記事の内容をぜひ活用なさってください。
「眠れない」に対処して
日々を快適に過ごそう
眠れない理由は人それぞれ異なりますし、理由が一つというわけではなく、複数重なっていることもあります。まずは、就寝環境と生活のリズムを整えることから始めてみましょう。睡眠記録を活用すれば、眠れない理由を特定できるかもしれません。食事(適切な栄養素摂取)、身体活動(運動)と並び、休養・睡眠は健康づくりのための基本的三要素の一つです。睡眠に満足できていないなら、健康のためにも問題を先送りせずに、改善のための行動を始めてください。
[ 参考文献 ]
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
監修医プロフィール
柳沢 正史 先生
株式会社 S’UIMIN 取締役 CSO 会長、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS) 機構長